2008/11/25

シッダールタ


今日は酷い風邪を引いてしまい、全ての予定を変更して家で寝込んでいました。。。
でも、その時間を有効活用しなければと、家にあった一冊の本を手に取りました。ヘッセ著/高橋健二訳『シッダールタ』新潮文庫です。この本は、感動以上のものを与えてくれる素晴らしいものでした。
主人公の遍歴を辿った内容なのですが、いつの時代にも当てはまる社会の狭間に陥った者の等身大の姿を描いていて、官能に溺れ煩悩に振り回される様もリアルに描かれていました。そして、自殺を考えながらも悟りの境地を開いて行く様からは、一人間が苦悩を乗り越え最終的には全てを受け入れ大きな愛へと辿り着く非常に人間味溢れ、読む者に勇気を与えてくれる内容になっていると思います。主人公が川の流れを見つめ、時間から解放され永遠の中で心を開いて行く場面は本当に美しく、読み終えた時には、真っ白い静寂の中に包まれている様でした。そして、シェークスピア同様、素晴らしい言葉から語録集があってもいいのではと思う程なのですが、私の胸に響いた箇所を一カ所抜粋します。
『さぐり求めること』「その人の目がさぐり求めるものだけを見る、ということになりやすい。その人は常にさぐり求めたものだけを考え、一つの目標を持ち、目標に取りつかれているので、何ものも見いだす事ができず、何ものを心の中に受け入れる事ができない、ということになりやすい。さぐり求めることは、目標を持つことである。これに反し、見いだすとは、自由であること、心を開いていること、目標を持たぬことである。」「そして、世界をあるがままにまかせ、世界を愛し、喜んで世界に帰属するためには、自分は罪を大いに必要とし、歓楽を必要とし、財貨への努力や虚栄や、極度に恥ずかしい絶望を必要とすることを、自分の心身に体験した。世界を愛しうること、世界をけいべつしないこと、世界と自分を憎まぬこと、世界と自分と万物を愛と賛嘆と畏敬をもってながめうることである。」

現在、人々は多種多様な価値観、何が正しく間違っているかなど分からず、先が見えずにその突破口を探し悩みもがいている様に思います。そして、今この現在に全てが存在している事実を置き去りにしてあてなき道を突っ走っている様に思います。心の中の平和を取り戻す大切さ、それに気付いたら教育なんていらないのかもしれないと思わせてくれた一冊です。
でも、凡人の私はまだまだ学ぶことがいっぱいです。。。
熱も出てきたので、今日はこのへんで^^