2009/02/02

My favorite place

                                                                              
                                                                                                    photo by  yukiko
私に日本の美を教えてくれた大切な場所です。もののあはれ、無常観、謙虚な精神を教えてくれた祖父の庭。祖父の手で敷き詰められた石の階段や、春には一面ピンクに染まる花畑。祖母や物理学の教授の叔父と叔母が一つ一つ種を蒔き、生き生きとした様々なお花や梅や桜がその季節になると咲きほこる。 そして、自家栽培も行い、行く度に季節の美味しいお野菜を分けてくれる。
小学生の頃は祖父から平家物語を聞かされ、冒頭箇所を暗唱させられました。
『祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり
沙羅双樹の花の色 盛者必衰の理をあらわす
おごれる者は久しからず ただ春の夜の夢のごとし
たけき者もつひには滅びぬ ひとへに風の前の塵に同じ』

そして、文学少女だった祖母からは百人一首を読み上げる様に言われ、特に、紀貫之の『人はいさ心もしらずふるさとは花の香ににほひける』(住む人はさあどうか、心は変わってしまったか。それは分からないけれども、古郷では、花が昔のままの香に匂っている)を読む度、お庭で揺れるお花を愛おしく思ったものです。

祖父が筆で『花を愛し 人を愛し 人に愛されよう』と、お庭の木を削り墨で書いたものがあります。短い間の命の中でも見るものに美しい気持ちを与えてくれるお花も、その尊い存在を愛おしむ気持ちがなければ、ただ通り過ぎてしまいます。人も同じで、どんなに素晴らしい人でも思いを交わし合わなければ、本当の良さを知らずに日々が過ぎてしまいます。また、己も人から愛される様に日々精進して行く思いがなければ、花を愛する心も、人を愛する心も育たないと教えてくれました。


どんな時も、どこにいても、ずっと私の心の故郷はここにあります。